ヒプノセラピーが導いた、40年ぶりの父との再会②

前回、ヒプノセラピーのセッションで「40年以上会っていない実父に、会う決意を持てるようにしたい」と伝えたところまで書きました。
今回は、そのセッションで体験したことを振り返ります。

催眠に入る前の対話

ヒプノセラピーでは、セッションに入る前に、セラピストがクライアントの話に丁寧に耳を傾けていきます。
何気なく語られる話の中や、あえて話さないことにもセッションの手かがりになるクライアントからのたくさんのヒントが含まれています。
話したくないことまで無理に話す必要はありません。そんな安心感の中で、先生との対話が始まりました。

「催眠に入る前に、理性的に考えると、なぜ今までお父さんと会うことができなかったと思う?」
私は答えました。
「母は父のことをほとんど話さず、離婚の経緯も知りません。幼い頃、父の話をすると母が悲しそうな顔をするので、『話してはいけないんだ』と強く思い込んでいたのかもしれません。だから、聞くこともできなかった。
その記憶が今も残っていて、踏み出せない気がします。
会ってはみたいけれど、どんな人かわからないし、母が離婚したくらいだから嫌な人間かもしれない。まだ迷いがあります」
そう口にした途端、涙があふれてきました。
普段は押し殺していた気持ちが、言葉にしたことで抑えきれなくなっていくような感覚でした。

先生は尋ねました。
「では、小さい頃の自分と話してみる? 当時のお母さんとも」
私はうなずきました。

「場所はどこがいい?」
「なんとなく……海がいいです」

海岸で出会った幼い私

そして、セッションが始まりました。
ゆったりとリラックスした呼吸を続けながら催眠に入っていくと、私はいつの間にか、どこかの海岸に立っていました。

波の音が聞こえ、潮風が吹いています。
目の前には海が広がり、その向こうには小さな船が見えました。
かすかに曇った空と海。
生温かい風が、髪を揺らして頬に触れます。
乾いた砂と湿った砂の、ちょうど境目に座っていると、そこへ幼い頃の自分と当時の母がやってきました。
先生が尋ねます。
「まず、幼い自分と何をしたい?」
「幼い私と、二人だけで海岸を歩きたいです」
私は幼い自分と手をつなぎ、たまたまポケットに入っていた飴玉を分け合いながら、波打ち際を歩き出しました。
「会いにきてくれて、ありがとう」
幼い私は、そう言って手をにぎってくれました。

やがて幼い私は、笑いながら無邪気に波と戯れ始めました。
すると、その楽しそうな表情や姿を眺めているだけで、涙が流れ始めたのです。

理由もわからないまま、言葉もなく。
随分と長い間、ただただ涙が流れ続けました。
先生に尋ねられました。
「その涙の理由は、何かな?」
「悲しいわけでも、うれしいわけでもない……。まだ、理由はわかりません」
自分でも、どうしてこんなに涙が出るのかわかりませんでした。

次回は、その後に体験した、当時の母との対話について書きます。

前回の記事|40年ぶりの父との再会①

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